1. 支援の対象と、太陽光を設置できる場所は違う
今回の報道は、事業用太陽光のFIT/FIP制度で支援を重点化する類型の検討についてです。設置許可、建築・農地・環境の手続、系統接続、採算性はそれぞれ確認が必要です。類型に当てはまるという理由だけで「認定される」「建てられる」「利益が出る」と説明しないでください。
提供記事では公有地、温対法の認定事業、ソーラーカーポート、インフラ空間の4類型が対象案とされています。細かな定義、証憑、認定時期、容量区分、経過措置、価格は公式資料・最終制度文書との照合が必要です。営農型は継続検討として扱い、対象外確定と記載しません。促進区域内にあることと、個別の事業計画が認定されていることも同一視しません。
2. 137.2GWを、そのまま営業市場の残容量にしない
経産省に掲載された2024年の推計資料では、公共・非公共施設の屋根を対象に、設置係数の取り方によって137.2〜284.0GWとなる試算が確認できます。数値は建物面積、設置対象面積、容量への換算の条件に依存します。137.2GWは個別物件の構造・所有者合意・改修時期・系統・需要まで保証する数字ではありません。推計資料(2024年、第67回会合・資料3)。検索抽出で確認した値であり、PDF全文は未取得です。
また、報道の6.1GWがFIT/FIP導入量であるなら、非FITの自家消費設備等を含む全国総導入量とは範囲が異なり得ます。137.2−6.1を「残存市場131.1GW」と断定したり、4.4%を全国の屋根利用率と呼んだりするのは避けます。地上20〜107GWも、前提を確認せず地上既設54.6GWから差し引いてはいけません。推計条件と統計対象が揃わない引き算は、営業判断を誤らせます。
3. EPCが最初に集めるのは、面積よりも案件を止める条件
屋根は所有・賃貸借、築年・構造計算、改修予定、防水、屋根材、保守通路を確認します。駐車場は柱と車路、車高、出入口、消防活動、基礎、風・雪荷重、地下埋設物を確認します。公有地は貸付・使用許可の期間と条件、公募、造成、災害リスク、接続費を確認します。インフラは本来機能と維持管理を損なわない計画、管理者の許可、耐食・冠水・安全条件を先に詰めます。これらは実務上の確認事項であり、個別場所の許可を保証する法的判定ではありません。
難易度は類型名だけでは決まりません。既存図面がある平坦な駐車場と、埋設物が不明な駐車場は別案件です。未確認事項を「難易度点数」で隠すより、構造・権利・系統・許認可・需要データの5項目を「確認済/不足/障害あり」に分け、不足証憑を具体化すると次の作業が明確になります。
4. 工場屋根と倉庫屋根で、同じ容量でも採算が変わる
本ツールは、年間発電量=パネル容量×年間発電原単位、自家消費量=発電量×自家消費率、余剰量=発電量−自家消費量と置きます。初年度の純便益は、自家消費量×回避買電単価+余剰量×受取売電単価−年間維持費です。自家消費率は実測値から求めた結果ではなく、入力者が置く仮説です。まず保守的な率から比較し、詳細試算では時間別需要との重なりを計算します。
工場は稼働日と昼間負荷、倉庫は照明・冷凍冷蔵・搬送設備と休日負荷が重要です。営業時間が長い店舗でも、日陰や低需要の日があれば自家消費率は下がります。売電中心案件は売電価格だけでなく、系統費、出力抑制、地代、保険、保守、廃棄費を確認します。FIT/FIP支援があること自体は採算の保証になりません。
5. 回避買電単価に、基本料金を混ぜない
電気代総額を使用量で割った平均単価には基本料金等が含まれる場合があります。太陽光で1kWhの買電を減らした際に避けられる費用とは一致しません。契約プラン、燃料費調整、再エネ賦課金、税区分、時間別単価を確認し、実際に減る従量費用を使います。基本料金の削減は最大デマンドと契約条件を別途検証してから加算します。
FIPの収入を単一の固定売電単価に置くのも概算に限ります。市場価格、プレミアム、インバランス、アグリゲーション費、出力抑制、環境価値の契約帰属を分解する必要があります。このツールの受取単価8円は制度価格ではなく、比較用に置いた仮定です。
6. カーポートと防災は、追加価値を別の欄で示す
駐車場の日よけ、雨よけ、EV充電、防災時の電力には価値がありますが、電気代削減に根拠なく金額を上乗せしないでください。通常利用の経済効果、非常時の供給能力、利用者の快適性、脱炭素の効果を分けて説明します。蓄電池・切替盤・自立運転・保護協調・非常用負荷が必要かは設備設計で確認します。
EV充電を昼間へ移す施策には自家消費を増やす可能性があります。ただしEV台数、駐車時間、走行距離、充電出力、必要SOCの制約があります。EVが不在の時間帯にPVが余る条件も確認します。太陽光・蓄電池・EVの効果を単純に合算せず、同じ余剰電力を重複計上しないことが大切です。
7. PPAは、需要家と事業者の収支を分ける
需要家の削減額は、買電回避額とPPA支払額の差が基本です。事業者は設備費、維持費、資金調達、接続、地代、契約、保険等から収支を計算します。需要家の初期費用がゼロでも、PPA事業者の投資はゼロではありません。本ツールは自己所有設備の簡易モデルで、PPA料金見積にはそのまま使えません。
提案には、①自家消費に絞る容量、②余剰も販売する容量、③蓄電池・EV等で利用を変える容量の比較が役立ちます。目標を設備容量最大ではなく、需要家の利益・事業者の採算・設置条件の成立に置きます。最適容量はこれらの制約と評価指標によって変わります。
8. 営業生産性を高める、前提の引き継ぎ方
初回面談では5項目の確認状況と概算レンジを出し、詳細試算に必要なデータを一度に依頼します。12か月の需要データ、契約電力・料金明細、図面、設備見積、運用予定、売電条件を案件IDに紐づけます。制度の証憑と採算前提を別管理し、どの見積・どの料金・どの版で出した結果かを追えるようにします。
提案速度の改善は、データ整理時間、再入力回数、再見積回数、初回提案までの日数で測れます。「10倍」を成果として先に宣言せず、同一条件の案件で従来業務と比較します。制度チェックと需要・容量比較を入口にし、時間別の詳細計算と前提監査まで一貫して提供することが、エネがえるの事業価値を高める仮説です。独占的に提供できるとの主張には競合比較が必要です。